告白実行委員会は「プロが本気を出して作った高校演劇」な映画

※ネタバレ注意

※成り立ちなど、憶測で書いている部分も多数あるのでご容赦ください

 

HoneyWorksの映画【好きになるその瞬間を。~告白実行委員会~】を、公開初日スペシャルイベントと合わせて観てきた。

 

私はHoneyWorksという制作集団の存在を知ったのは、2014年11月26日に発売した【僕じゃダメですか?~「告白実行委員会」キャラクターソング集~】からだ。

iTunesでダウンロードできると知り、好きな声優である麻倉ももさん、雨宮天さんが歌うキャラクターソングだけをダウンロード購入した。
後からニコニコ動画Vocaloidでセルフカバーで動画を投稿していることを知った。

その程度の認識しかなく、当時は「麻倉ももさん、雨宮天さんが歌っている楽曲」という貴重さだけで嬉しかった。

キャラクターソングの発売から1年5ヶ月ほどが経過し、前作である「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」を見たのが2016年4月23日、公開初日スペシャルイベントだ。

 

前作は、正直全く面白くなかった。
感想として文字に起こすのも憚られるほど、感じられるものがなかったのだ。
だが、この映画のメインターゲット層は女子中学生・女子高生である。
年齢も性別も、作品に対するバックボーンもあらゆるものがメインターゲットからかけ離れている自分にとっては感じるものがなくて当たり前かもしれない。
メインターゲット層には大ヒットしているのであろう。

そう思っていた。
公開初日スペシャルイベントのライブがとても楽しかったので、映画本編の記憶は薄れ、その日の記憶は「楽しかった」という気分に上書きされた。

 

それから8か月が経過して今作を見に行った結果、とても面白く、衝撃が走った。
作品フォーマットはほぼ変わっていないのになぜこんなに面白いと感じたのか。
前作が面白くなかった理由と合わせて自分の中に浮かんだ感情を素直に文字に起こしてみることにした。


1.麻倉ももさんが主演であること

当たり前な理由である。
私にとってHoneyWorksを知るきっかけになった「今好きになる。」を歌っている麻倉ももさんのキャラクター、瀬戸口雛が今作の主役だ。
麻倉ももさんが、63分間ほぼ喋り続ける。麻倉ももさんが出演している作品でこんなことは今までにない。
これが事前に分かっていただけで嬉しいものだったが、いざ体感してみるとやはりこの理由は大きい。
前作にも麻倉ももさん、雨宮天さんは登場しているもののサブキャラクターのため台詞は少ない。

2.ストーリーとエンディングのギャップ

前作は【伝えたいけど伝えられない微妙な乙女心】がメインテーマだったと感じている。
メインターゲット層である女子中学生・女子高生に共感を呼んだのも、その部分なのだろう。
前作のストーリーは、榎本夏樹を主演として乙女心を描いた作品だった。
三角関係に発展し、泥沼の様相を呈するも最終的には元々両想いであったことがわかり、両想い同士で結ばれる結末になった。
はっきり言ってストーリー自体は非常にありきたりなテンプレのラブコメである。
個人的には【勇気を出して伝えることの大切さ】が、最大限前作から汲み取れる良い所だ。(それすらもありきたりだ、という声もあるだろうが)

今作はどうだったか。
ストーリー自体は、「今好きになる。」の歌詞をなぞったもので、キャラクター同士の関係性、結末は既に分かっている。
この作品のストーリーのキモは、【誰の想いも実らない切なさ】だ。

瀬戸口優 ←→ 榎本夏樹 ← 綾瀬恋雪 ← 瀬戸口雛 ← 榎本虎太郎( ← 高見沢アリサ ← 柴崎健)

舞台は前作と同一のため上記の相関図になっているが、右に矢印が向いているのは最初の二人だけである。

タイトル通り、瀬戸口雛が綾瀬小雪に惹かれていく過程を丁寧に描き、途中に榎本虎太郎の気持ちも描いていくことで、これでもかというくらい「片想い」を描いている。
前作とはまた違い、【誰の想いも実らない切なさ】が描かれている。綾瀬雪は前作で描いているため端折られてはいるが。

前作と今作の最大の違いは、【どんでん返しによる落差の演出】である。
何のことかというと、エンディングのことだ。
前作は劇中でカップルは3組すべて成立し、割を食ったのは片想いだった綾瀬雪だけであった。
今作ではカップルは一組も成立せず、エンディングを迎える。
そこで私はエンディングと本編のギャップに衝撃を受けた。
スタッフロールの隣にはエンディングテーマの「大嫌いなずだった。」の歌詞通りのストーリーが描かれている。
HoneyWorksのことをよく知らないが、エンディングで描かれたストーリーはおそらく誰も知らなかった最新の物語なのであろう。
エンディングが本編と言ってもいいのかもしれない。
平たく言うなら「キュンキュンした」。

【楽曲の歌詞をストーリーに起こす】という作品フォーマットは前作と共通しているものの、前作ではなかった、エンディングにてその先の物語が描かれているのは衝撃だった。

エンディング後の後日談の、瀬戸口雛の「知ってる。」という台詞が個人的に一番突き刺さった台詞である。

3.プロが本気を出して作った高校演劇」であること

これについては前作・今作との比較をするものではなく、前作では意識しなかったが今作が良かったことでなぜそう思ったのかをメタで考えてみた結果浮き上がった点である。

告白実行委員会は「プロが本気を出して作った高校演劇」なのだ。

高校演劇とは世界観・舞台・登場人物のことだ。
2010年現代の中学・高校を舞台に、中学生・高校生の恋愛を描く。
女子中学生・女子高生にとってこの上なく共感できる題材であろう。

高校演劇とは、シェイクスピアのような往年の名作を演じることもあれば、演じやすい現代の設定・登場人物でオリジナル脚本を作ることも珍しくない。
人生経験の乏しい高校生にとってはそれが「やりやすい」のだ。

HoneyWorksはオリジナル楽曲に絵を付けて動画としてニコニコ動画に投稿し、中高生の人気を博した。
それは投稿当時は素人クリエイト集団であっただろう。
だが、人気が出て、シリーズ化し、レーベルを得て後ろ盾ができたことにより、彼らはプロとなった。
クリエイター自身は今でも変わっておらずプロになったかそうでないか、というところを議論するのは野暮なのかもしれない。
だが、楽曲とイラストだけでなく、声優が声を吹き込んでドラマCDとなり、アニメーターがアニメーションにしたことで、「やりやすい」脚本は徐々に本格化した。小説にもなった。
これが私が思った「プロが本気を出して作った高校演劇」だ。

私は高校生やその周辺の年代ではないが、プロが作り上げた本気の高校演劇を見て非常に感動した。

彼らは高校生ではないだろうが、高校演劇にて高校生が「やりやすい」ものを題材に、作品を作ることができる力がある。その点がHoneyWorksの持つ最大の魅力だと私は思う。
現役中高生ではない私が感動したのは、演じた声優の一人が舞台挨拶で言っていた「こんな高校生活送りたかった」という羨望が大きいだろう。
現役中高生には【共感】を、それ以外の層には【羨望】や【思い出】を与えることを意識して作った作品なのだな、と今作を見て思った。

 

ここまで書いてわからない人のために念のため言っておくと、このブログでは褒めています。


この記事を書くきっかけになった、以下のブログにも感謝を述べる。
非常にわかりやすく、端的に述べており、どの文章をとっても全面的に同意した。

ashitahakimito.hatenablog.com

 

総評として、非常に良い作品だった。あと何度か、劇場に足を運んで繰り返し見たいと思う作品であった。

ブログ開設と使用用途のお知らせ

こんにちは。

210と申します。

読み方はにひゃくじゅうだったりニートだったり様々です。

インターネットで知り合った方々には主にニートと呼ばれることが多いです。

働いてますけどね。

 

ここまでが自己紹介のテンプレです。

 

このブログは、最近ライブ・コンサート・イベントに行く機会、あるいは自身が出演する側になったりすることが多く、何かを感じた時に感想を形に残さないと勿体ないと少しずつ感じていたんですが、ある映画を見てその気持ちが爆発したのでブログを開設しました。

今後、イベントの感想を中心に投稿していくことになると思います。

お暇があればお付き合いください。よろしくお願いします。